「絵画のお尋ねでは、子どもに何を意識させればよいのでしょうか?」
保護者の方から、よくこのようなご質問をいただきます。
「見栄えのする絵を描かせることでしょうか」
「絵の内容をしっかり説明できるようにすることでしょうか」
「想定される質問への答えを、きちんと覚えさせることでしょうか」
もちろん、絵を描く技術や、自分の描いたものについて言葉で伝える力は大切です。
しかし、私がお伝えしていることで最も大切にしていることの一つは、「その子がどのような表情で、自分の絵について話しているか」ということです。
学校の先生方は、完成した絵だけを見ているわけではありません。
「何を考えて、この絵を描いたのか」
「どんなことを感じながら話しているのか」
「自分の言葉で伝えようとしているのか」
そして、そのときの子どもの表情や目の輝きも見ています。
実際に、絵画のお尋ねに備えて、ご家庭でたくさんの「答え」を用意し、何度も繰り返し練習しているお子さまがいます。
もちろん、準備すること自体が悪いわけではありません。
ただ、あまりにも多くのセリフを頭に入れ、「この質問にはこの答え」と覚えることに意識が向きすぎると、次第に子どもの表情がなくなってしまうことがあります。
質問をされても、頭の中から正解を探している。
「間違えてはいけない」と考えている。
すると、本来なら「こんなことを考えたよ」「ここが楽しかった!」と生き生きと話してくれるはずの子どもから、自然な言葉や表情が消えてしまいます。
少し考えてみてください。
学校側が、どれほど完成度の高い絵を描き、流暢に模範的な回答をする子どもを目の前にしたとしても、そこに子どもらしい表情や、その子自身の思考が感じられなかったら、その子と一緒に学校生活を送りたいと思うでしょうか。
小学校受験で大切なのは、「正しい答えを言える子」をつくることではありません。
自分で考え、自分の感じたことを、自分の言葉で伝えられる子。
そして、その瞬間に自然と表情が生まれること。
絵画のお尋ねでは、作品の完成度だけに目を向けるのではなく、ぜひその絵を描いているときのお子さまの気持ちや、話しているときの表情にも目を向けてみてください。
「何を答えさせるか」ではなく、
「この子は、この絵について何を感じ、何を考えたのだろう」
そこから始めることで、受験のために覚えた言葉ではなく、その子自身の言葉が少しずつ生まれてきます。
小学校受験で学校が出会いたいのは、完成された「受験生」ではありません。
これからたくさんのことを経験し、考え、感じ、成長していく、一人ひとりの子どもなのだと思います。



